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吃音、Q&A

吃音についてよくある質問

都筑吃音相談室では、声を出して話す練習をする訓練法とは異なり、新しい考え方にて吃音の改善のための指導や訓練を行っています。吃音の改善についてお問い合わせのありました色々な質問に、「自然で無意識な発話への遡及的アプローチ(RASS)」の立場からお答えいたします。

Q1吃音の種類はいくつありますか?

 

A1   分け方にもよりますが、発達性と獲得性で分ければ2種類です。この場合獲得性の

に神経原性吃音と心因性吃音の2種類があります。原因別に分ければ3種類です。発達

、獲得性神経原性吃音、獲得性心因性吃音になります。

(吃音の種類)

  ①発達性吃音(世間一般で吃音を称しているもの)

  ②獲得性吃音:獲得性神経原性吃音

         獲得性心因性吃音

(原因)

 発達性吃音の原因に対する仮説はいろいろありますが、原因は未だ確定していませ

ん。獲得性神経原性吃音は病気や怪我などによる脳の器質的損傷により発症しま

す。獲得性心因性吃音は社会心理的要因と言われています。簡単に言いますと精神

的問題です。

 

(発達性吃音の名称)

 歴史的には単に吃音と言えば、現在の発達性吃音のことを指します。その理由は近年

「獲得性」の吃音が発見され、両者を区別する必要から「発達性」が付いたと考えられま

す。

 従来の「吃音」は幼児期から小学校高学年の間にほとんどが発症します。獲得性は青年

期以降に発症しますので、年齢区分としての意味合いが強いと考えられます。なお、獲得

性神経原性吃音も初めからこの様に呼ばれていたわけではなく、最初は「吃様症状」次に

「症候性吃」そして現在の「獲得性神経原性吃音」の名称に変遷しています。

 ご注意:

 これを読んだ方が自分は心因性だと勝手に決めつけないで下さい。また、神経原性

吃音であれば多くの場合は生命の危機の後に発症しますので、初めから病院で対応されて

います。従って間違うことはないと考えます。獲得性心因性吃音も病院で対応されるべき

吃音であり、もし御家族の一人が獲得性心因性吃音ではないかと思う場合は、(本人はな

かなか訓練を受けようとはしない傾向がありますので) ご家族が勧めて、吃音が分かる

病院で受診してください。

 なお当ホームページで、「吃音」と称しているのは全て「発達性吃音」のことを指して

います。

 

 

Q2私は声を出す前に一度頭の中で言ってみて、上手く行きそうな時は声を出して言い、詰まってしまうときは他の言葉に換えたり、それも駄目なときは言うのを止めたりしています。だからこの頃は吃っていないと言っていいんですよね。

A2

【問題点の分析と回答】

①   貴方は頭の中で一度言ってみますよね、そうです「話す」とは頭の中で行われ

   ているのです。

② 声を出すのは発音(構音)であって「話す」こととは別物であることを体験し

  ていますね。

③ 「頭の中で一度言ってみる」ことは工夫(すらすら話すためのテクニック)で

  す。

④ 他の言葉に替えることも第3から出はじめる工夫です。

⑤ 言うのを止めることは回避で吃音の中の症状としては一番重い症状です。

⑥ 頭の中で一度言ってみて、「詰まってしまう」時は言うのを止めるのですか

  ら、「詰まってしまう(ブロック)」が頭の中で起きていることを体験してい

  るのです。簡単に言うと頭の中で吃っているのです。

⑦ 頭の中で話しているときは口や舌や喉は動いていませんから、発音(構音)の

  問題ではないことが分かります。つまり口や舌や喉で吃っているのではないの

  です。

⑧ 貴方は回避が生じている段階ですから第4層です。

⑨ 「この頃は吃っていません」と言うのは、残念ですが“頭の中で吃っている”の

  ですから、吃っているのです。話すのを回避して症状を外に出さないで隠して

  も吃っているのです。このように「症状が外に現れなければ吃っていなくて、

  症状が外に現れた場合に吃っている」と考えるのは誤りです。吃っているかい

  ないかは頭の中で症状が発生しているかいないかによって判断すべきです。

⑩ 話すのを回避して、他人には頭の中で吃ったことを隠せても、自分自身に対し

  ては隠すことはできません。従って次の⑪の問題が発生しています。

⑪ 言うのを止めて表面的には吃っていない様にごまかして目の前の恥ずかしさから一時

  的に逃れても、自分の中ではまた重大な問題が発生しています。

 

     貴方は目先の一時的な恥ずかしさから逃れるために話すことを回避して、その場

  は恥ずかしく思わないですんだから良かったと思っているでしょうが、目先の恥ずか

  しさから逃れることに目を奪われている間に、貴方が気付かないところで大変損を

  していることになります。つまり「恥ずかしさから逃れる」という目先の1円を拾う

  ことに目を奪われている間に下記の吃音悪化要因を増やしているのであり、明日の10

万円を取り損なっているのです。

 

 ■Van Riper の吃音悪化要因に沿っての説明

  貴方が不利益を被っている内容は次の通りです。

 a)  吃ってはいけないという吃音に対する「否定的価値観」をますます強くしていま

  す。(再強化)

 b)  吃ると恥ずかしいという思いをどんどん強くしています。(否定的情動反応

 c)  健常者と同じように話したいとの願いは、またもや達成されなかったことに対する

        フラストレーションを持ちます。

 d)  気持や考えを伝えたえ相手に分かってもらいたい気持が満たされなかったことによ

        るフラストレーションがたまります。

 e) すらすらと言えなかったので ❝スラスラ言いたい❞ という願望は満たされず、フ

       ラストレ ーションがたまります。

 f)  俺は駄目だという否定的自己認識を強めています。

 g)  発話回避をしているのですから、この発話回避をした場面に対する恐れも強めてい

        ます。

 h)  言おうとして止めた対象の「語」または「語音」に対して、この語は言えないとい

        う恐怖感  (音または語に対する恐れ)を強くしていきます。

 

■貴方が今最も恐れているのは「恥ずかしさ」であり、吃った時の辛い気持ですね。その恥ずかしさが無くなるとはどういうことかを説明します

 

 貴方は吃るから恥ずかしいと思っているようですが、それは多くの吃音の方がもつ全く

の誤解です。今の貴方は「吃ることはいけない事だ、駄目なことだ、劣ることだ(吃音に対

する否定的価値観)」と考えているから、吃った時に恥ずかしいのです。

 この吃音に対する否定的価値観は第2層の後半から持ち始めます。最初は周囲の者がこ

の価値観を持ち、吃音の症状に対し指摘したり、嫌な顔をしたり、笑ったりして罰するこ

とから、自分でも“吃ることはいけない事だ”との考えを持ち始めます(否定的価値観の取

り入れ)

 自分でもこのように考え始めた時から、他人からは何も言われなくても、吃った時には

自分で「いけない事だ」と自身を罰することが始まります。他人から言われるよりも “自

分自身で罰すること” の方が多いのです。しかし2層後半ではこの価値観はさほど強くは

りません。第3層になると吃音に対する明確な持続的な自覚を持ち、この価値観は確固た

るものなります。

 吃ることはいけないことだ、恥ずかしいことだとの考え方が第3層になるとますます強

くなります。そしてこのダメだという考えの下で、恥ずかしさから逃れるために、色々な

人為的な話すテクニック(工夫)を使い、つまってしまうことを何とか抑え込もうとする

のです。この行動はますます吃ってはいけない、恥ずかしいという思いを強めてしまいます。

 逆に「吃ってはいけないという考え(吃音への否定的値観)」が無くなると、吃って

も恥ずかしいという気持ちが生じなくななります。つまり吃っても平気でいられるように

なります。

 

どうすれば良いか?

1.「吃っても良い」と考えることです。

    この考え方は自分で自分を罰すること無くします。

2.「吃っても良い」と考えるだけでなく、「吃ってはいけない」という考えを強める

    行動は止めましょう。

話すことを人為的にコントロールして、症状が外にでることを抑え込もうとする行

    動は「吃ってはいけない」という考えをどんどん強める効果があります、簡単に言う

    と、話すためのテクニック(工夫)を使えば使うほど、吃ることが恥ずかしいという

    気持ちを強めるので、このテクニック(工夫)の使用を止めることが重要です。もし

    理性では吃っても良いと考えられるようになっても、行動としては吃ってはいけない

    という考えの下で話すためのテクニック(工夫)を使っているのでは、気楽になる効

    果は差し引きゼロになりかねないのです。(話す練習をる訓練法とはまるで逆の考

    え方ですね。)

 

3.自分が「吃っても良い」と思えるためには、どうしたらよいか?

     まず吃った時に誰から罰せられていたかを再確認しましょう。吃った時に貴方を罰

していたのは、最初は周囲の人や他人でした。途中から自分自身も加わり、他人と自

    分の両方から貴方自身が罰し続けられてきました。このことに付いている人は少な

    いのです。今までの多くの相談者は他人から罰せられた(嫌なをされたなど)と報

    告する方がほとんどでした。

     でも考えて下さい。実際の生活場面で毎日まいにち他人から馬鹿にされたり、嫌な

    顔をされたりしましたか? そうではないでしょう。むしろ自分で自身の話し方に「

    これではいけない、何とかしなければ、ああ恥ずかしい」と自分で判断して、(私は

    )駄目だと思い続けてきたことの方が、圧倒的に多いのです。つまり他人から罰せら

たことよりも、自分で罰してきた方がはるかに多いのです。

 

     吃って良いと思えるには、自分が吃ることを他者から罰せられない」ことと「自

    分が自身を罰しない」ことの両方の確認が必要なのです。

      a) 私は自分を罰していた 私は他者から罰せられた

                b) 私は自分を罰していた 私は他者から罰せられた

      中学生以降の場合は圧倒的に上記 a) の場合です。自分自身でダメだという思い

    をとても強くしている場合です。小学生で第3層、4層の場合はb) の場合の吃音児も

    います

     まず、簡単な b) の方から言いますと、工夫を止めるとどのような良いことがある

    かを理解し、工夫を止めることです。このb)の場合は間接法を用いる言語聴覚士の

    説明内容を比較的素直に実行してくれて、気楽になることが多くあります。

     問題は a) の場合です。自分の中で悪循環を起こし、勝手に推測して「他者が自分

を低く見ているに違いない、駄目な話し方をする人だと思っているにちがいない」と

    強く思い込んでいる場合が多いのです。信念に至っている方もいます。この a) の場

    合はより問題が小さい方から対応します。それは、「他者は自分っているほどに

は、自分の吃音症状を拒否していない」ことを自らの行動を通して確認することで

す。この確認の法の一つに自分が吃ることの告白があります。

  4.どうしたら告白できるか?

   1)日常の生活の世間話でどうでも良い内容の話の時に、(ひどくではなく)ちょっと

     ブロックした時に、ぽろっとこぼれ出るように、しかも真剣にではなく冗談めかし

     て、「かんじゃった」と言ってみることです。この「かんじゃった」はテレビ番組

     でタレントの司会者や出演者が放送中によく使いう言葉です。

      こういった時に、相手の反応を確認してください。貴方が今まで思い込んでいた

     反応とは異なり、貴方が思っていたほどには相手は貴方の喋り方を気にしていない

ことに気付くことが多いのです。このように少しずつ行動を通して確認をしまし

     ょう。そして目から鱗を少しずつ取り除きましょう。なお、清水の舞台から飛び降

     りる覚悟で告白しようとするよりも何気なく話す方がうまくいきます。

  

 

Q4 大人でも、どうしたら恥ずかしさのない第2層にもどれすのですか?

 

A4  2層へ戻るには、まず「回避」を止めることです。

             ↓

   次に全ての ❝話すための工夫=人為的に話すことの操作❞ を止めることです。

 

 回避を止めるだけでも第3層に戻れます。次には第3層の時に、ご自分は治療法だと思

いまたはそのように教えられ行い始めた二次的症状を止めることです。二次的症状とは

「工夫」という“話すためのテクニック”を止めることです。

 進展段階の第2層の右側の欄をみて下さい。苦悩はないでしょう。恥ずかしさもないの

す。吃音が軽減するまたは改善するとは進展段階を正常に向かって戻って行くことで

す。そして正常に向かって進展段階を遡る過程で、進展した時にそれぞれの段階で生じた

ことが同じように現れます。

進展する時には第2層前半では恥ずかしさは全くなかったように、改善する過程で第2

層後半まで戻った時には、まだ吃音のことを気にはしますが、恥ずかしさはほとんどなく

なります。2層前半まで戻るとまだブロックは出ますが、気持は大変楽になり日常の生活

場面でも吃音のことが気にならなくなり、吃音のことはほぼ考えないで生活ができるよう

になります。もはや話すことに対する恐れや恥ずかしさはないのです。

 

Q 第2層前半に戻ると、どうなりますか?

A 吃音のことは忘れて生活できます。

第2層前半に戻りますと、吃音のことを忘れて生活できます。まだブロック(つまる

こと)がでますが、話し手は内容を考えることだけをしていて、発話努力がありませんの

で、話すことがずいぶん楽になっています。吃音はいけないものだとは考えませんので、

吃っても恥ずかしさもありません。そして、思考内容を容易に出せますので、聞き手への

情報伝達量は飛躍的に高まります。つまりご自分の考えを伝えやすくなっています。

(*発話努力とは、意識して言葉を出そうとする行動です。通常、健常者はこの発話努

力をしていません。)

「自分一人では “話すためのテクニック” を止められる自信がない」と思いがちです。

話すことの回が生じている第4層の多くの方がそうです。この様な方は ❝間接法を行

っている吃音専門家❞ の指導を受けながら進めた方が “話すためのテクニック” を止

められ、恥ずしくなくなる確率が増すのです。

 本相談室で直接法をお勧めしないのは、直接法は上にも述べたように二次的症状であ

る “話すためのテクニック” を治療法または訓練法として用いるからです。貴方も同じ

ことをご自分でしてきましたね。またはどこかで声を出しての話す練習の訓練を受けまし

たね。そして今の状態があるのです。

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