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こちらでは吃音(どもり)について書かせていただきます。どうぞご参考になさってください。
世間一般の方や吃音(どもり)の当事者の方、そしてWEBで見られる吃音に関する用語には多くの混乱が見られます。ここではこれらの混乱を避けるために学術的用語を用いることにします。古い用語と対比し分かりやすくしてあります。
吃音の中核症状
(学術用語) (世間一般での用語)
音節と語の部分の繰り返し 連発
引き伸ばし 伸発
ブロック(阻止) 難発
まず基本的な症状は上記の3つです。 ❝ 音節と語の部分の繰り返し❞ (連発)とは「みみみかん」「みかみかん」のように音節や語の部分を繰り返してしまうことです。 ❝ 引き伸ばし ❞(伸発) とは音を引き伸ばしてしまうことです。❝ ブロック ❞(難発)とは声が詰まって口も動かなくなってしますことです。これらは自分の意思とは関係なく出てくる吃音の基本的な症状で、中核症状と言います。
1.吃音(どもり)の症状には「中核症状」と「二次的症状」の2種類があります。
1)中核症状
中核症状(中心となる症状)とは、話すことに現れる症状です。この中には「音節と語の部分の繰り返し」(連発)と「引き伸ばし」(伸発)、「ブロック」(難発)の3種類があります。
2)二次的症状
さて、もう一つの症状は多くの方が、吃音の治療法だと誤解しているものです。それは実は ❝ 二次的症状 ❞ と言い、れっきとした吃音の症状なのです。二次的症状には「解除反応」、「助走」、「延期」、「語の置き換え」や「回避」等があります。これらはまとめて工夫と呼ばれます。
解除反応、助走、延期は全てブロックから逃れようとして取った自分の意思による行動です。
ブロック(声が詰まってしまう症状)が嫌で、この状態から抜け出そうとして行う行為を「解除反応」といいます。例には「詰まって声が出ない時に力を入れて乗り切る。」な
どがあります。
ブロックを防ごうとして、目的の語を話し始める前に色々なことを行うのが「助走」で
す。例には「【えーと、まー】等の言葉を意識的に入れる。」等があります。
ブロックしないで言えると思うまで、話すのを先送りにするのが「延期」です。
言いたい言葉がブロックして言えないと分かると他のことばに置き換えてしまうのを「語
の置き換え」と言います。
そして、一生懸命に解除反応や助走、延期を使ってもブロックしてしまい、恥ずかしく
て仕方がなくて、話すのを止めたり(発話回避)、話す場所に行かなくなったり(場面回
避)するのが「回避」です。
ここで重要なのは、吃音の方や周囲の人たちは、ブロックから逃れようとして使ったり
教えたりする話すためのテクニックが実は吃音の症状(二次的症状)だと知らないことで
す。そのために世の中の多くの人は、声が詰まって話しがストップしてしまうのを防ぐた
めに、スラスラと話そうとして❝ 話すためのテクニック ❞ を使うことが吃音治療だと誤
解しています。
吃音の大きな特徴の1つは、進展(悪化)する場合があるということです。吃音が悪化
するステップは4つの段階に分かれます。これを進展段階といいます。各段階は、それぞ
れ第1層、第2層、第3層、第4層と呼びます。
軽くなったり改善したりする時にどういう順番で進展段階を戻って行くのか、吃音がどういう順番で進展(悪化)して行くかを知っていることが非常に重要です。なぜなら軽減するとは第4層の方から正常域に向かって戻ることだからです。治るとは第4層の方から戻り正常域に達することだからです。悪化と軽減・改善はまさに進展段階で逆方向のプロセスを取ります。
次に、各段階での状態を説明します。
進展段階のそれぞれの段階のことを知ることは、吃音の訓練にとって大切な事です。ご自分がどちらの方向から来て、今どこに居て、これからどちらの方向に向かえば良いのかを知っていますか。この進展段階はそれを示してくれるのです。
他方、もし貴方が進展段階のことを知らないで、知っているのはボートのオールの動かし方(話すためのテクニック)だけで、大海原で毎日ただオールで漕いでいるだけでは、どこに進んでいるか、どこにたどり着くかも分からず、相変わらず遠くにも島影は見えず、疲れ果てて悲嘆にくれている状態に等しいのです。
上の囲みが中核症状、下の囲みが二次的症状です。
■進展段階
1)正常域:(吃音が生じる前は誰もが正常であった。)
吃音になる前は誰もが正常でした。つまり健常者であったのです。生まれた時から吃音であった人は誰もいません。
2)ほとんどの人が第1層から始まります。
吃音が悪化するにつれて症状が入れ替わるのではなく、積み重なっていきます。多くの場合は幼児の時(小学校に入学以前)に、第1層から始まります。最初の症状は「音節や語の部分の繰り返し」から始まり、進むと「引き伸ばし」が生じます。
この時は吃る時期と吃らない時期があり、1ヶ月くらいの期間で交互に現れます。本人にはまだ自分が吃音だと分かっていませんので、恥ずかしくもなく、どこででも自由に吃りながら話します。たまには園の同級生や友達から「どうしてみみみかん」というの?と訊かれる場合もありますが、周囲の大人はあまり気にせずにいる場合が多い段階です。
・本人の年代は幼児期が該当します。
3)第2層ではブロックが生じます。
吃音になって1年から数年程度でブロック(音を出すことに詰まって口が一瞬から数秒間止まってしまう症状)が出はじめます。この段階でも初めのうちは本人が違和感を感じつつも、まだ吃音だとは気付いていないことが多くあります。親や周囲の大人は気付く人とまだ少し変だなと思うくらいの人に分かれます。本人はブロックしながらもどの様な場面でも自由に話します。
・本人の年代は幼児期から小学校低学年が該当します。
4)第2層後半になると随伴症状が加わります。そして話し方や症状に自分でも注目する様になります。
随伴症状とはブロックした時に自分の意思とは無関係に、手足や胴体、首、顔の一部や口などが動いてしまう症状です。ブロックして随伴症状が出はじめると、他の子と話し方の違いがさらに目立ち始めるために、親も「何とかしなくては」と思うようになることが多いのです。
この段階では本人も吃音に気づき、自分の話し方を気にし始め「注目」をする様になります。
・本人の年代は幼児期から小学校低学年が該当します。
第2層後半で吃音を悪化させる重要なことが加わります。それは吃音に対する否定的価値観(吃音はいけないものだという考え方)を周囲の者が持ち始めることです。
最初は他の子と話し方が異なる場合があることに戸惑いが生じたでしょう。しかし、この段階ではまだ否定的価値観ではなく、「異質性への注目」であり、まだいけないものだという考え方はくっついていなかったのです。そして徐々にこの「異質なものへの拒否」が始まり、「異質なものは取り除かなければいけない」という考えに変わっていきがちです。そして「吃音に対する否定的価値観」を周囲の人が持つ段階になります。
5)第3層:話すテクニックを使った時から第3層です。
次に、周囲の人が吃音を何とかしてあげようという愛情や好意から、「どうしたら良いか?」と他の人に訊いたり調べたりして、これは良いことを知ったと思い、本人に話すためのテクニックを教えるようになります。そして、本人も教えられたテクニックを使い始めます。この時点から第3層です。
「話すテクニックによって吃音の症状をコントロールしようとする行動」は、世間一般の人がもつ「人間は口で話す」という誤解と、「口の動かし方や呼吸の仕方をコントロールすれば簡単に吃音が治るであろう」という誤解から生じたものです。なお他の人から教えられなくても、本人が偶然に話すテクニックを見つける場合もあります。
第3層に入るといつも吃音のことを考えたり、自分の話し方をいつも気にして注目したりする様になります。別の言い方をしますと、この頃から毎日といって良いほどに吃音のことを考えるようになります。小学校の3,4年生あたりから第3層に入る場合がほとんどです。
6)多くの人がはまる大きな落とし穴
①話すためのテクニックは劇的効果をすぐに現す。
話すためのテクニックは劇的効果をすぐに現します。このすぐに効果が出ることを「即効性」があるといいます。その時は、これで治ったと多くの吃音の方が思うのです。そして「うまく話すためにはコントロールするものだ」という誤解を強めます。一時的であっても「辛かった状態から抜け出し、強い安心感や開放感を持てた」ことが「テクニックを使ってコントロールすること」と結びつき、この結びつきが本人や周囲の人を「また他の何らかのテクニックを使えば、あの辛い状態から抜け出せるだろう」という思いにかき立てるのです。今まで使っていたテクニックの効果がなくなると、ますます話すためのテクニック探しにのめり込んで行きます。
②話すためのテクニックの効果は持続せず一時的です。
テクニックの効果は数日から1ヶ月くらいの間です。短いと数時間という場合もあります。しかし、そのテクニックを使い続けていると、慣れが生じて目新しさがなくなります。今までとは異なった新しいテクニックを使うと、珍しさがあったために語音や話すことや自分の緊張等から注意がそらされますが、失われると「そのテクニック自体に注意が向かなくなり、話すことに関して今まで行ってきた吃音者独特の行動から自分の注意がそらされるという効果(注意の転換)」がなくなり、またブロックする状態に戻ってしまいます。
③落とし穴にはまって辛いこと
第2層後半で「吃音への否定的価値観」を持った周囲の人から、吃った時に笑われたり、指摘されたり、からかわれたり、話し方を直そうとされたりすることで、吃音児本人も「吃音はいけないものだ」という「吃音への否定的価値観」を自分の中に持ってしまう段階に入ります。自分がこの否定的価値観を持っていなかった時は、吃って他人から指摘された時は恥ずかしくても、他人から指摘されない時は恥ずかしくはなかったのです。
しかし、「吃音への否定的価値観」を自分の中に持ってしまった後は、他人から言われなくても、吃ると自分で自分を「駄目だ、駄目だ」と罰するようになります。そして、実際には笑われたり馬鹿にされなくても、かつての経験から「吃った時には周囲の人は自分を心の中で笑ったり、馬鹿にしているに違いない」と自分で思うようになります。このように自分で自分を追い込んでしまいがちです。ここから悪循環に陥ってしまったのです。
吃音への否定的価値観を自分の中にもって「自分の話し方は駄目だ」と否定しながら、恥ずかしいのでとりあえず目の前の場面だけでも何とかして乗り切ろうと、色々な「話すテクニックを使ってあがく」ことで「駄目だ」という思いを、毎日強くしているのです。
1日や2日であるなら問題はありませんが、この行動を何年にもわたって行うと「駄目だ」という思いを自分で大変強くしてしまいます。その結果、吃った時にその場から逃げ出したくなるほど、恥ずかしくなるのです。このように上記の行動は自分で自分を罰し続けているにほかなりません。
貴方はこれから皆の前で話さなければならない時や、話している最中に (安心している時には全く注意を向けずに忘れているのに) 自分の心臓がドキドキするのを感じませんか? 自分の意思に反して汗がいっぱい出てきませんか? 顔や耳まで熱くなったり赤くなったりしませんか? 自分の肩や顔や喉や腕までもカチンカチンに力が入っていることを感じませんか? 口の中がカラカラに乾いてしまっていませんか? お腹が痛くなったり、胃が痛くなったりしませんか? そして、皆の前での話しやプレゼンテーションが終わった後は、これらの身体的状態もス~っと無くなってしまうのに、また次の場面で発生し、何度も繰り返していませんか?
このように自分の意思とは無関係に自律系の身体反応までも生じてしまいがちです。
③治すためのものだと思っていた「話すためのテクニック」が実は吃音の症状(二次的症状)だったのです。
世の中の多くの人は、大きな誤解をしています。「話すためのテクニック」つまり第3層の
「解除反応」、「助走」、「延期」や「語の置き換え」は吃音の二次的症状なのです。
「治すための話し方だと教えられて、そして信じてやってきた事」が実は症状だったなんて信じられないと思うかもしれません。残念ながら吃音者独特のこの行動は学術的には症状なのです。第3層の吃音の方は「解除反応」、「助走」、「延期」などの話すテクニックを使ってブロックしないようにして、健常者のようにスラスラ話そうと努力してきました。これは吃音の方が健常者に近づこうとする目的で行ったものです。しかし健常者はこのような行動はしていません。
健常者のようにスラスラ話せるようになりたいと思い行ってきた「吃音の方の独特の行動」は、本人の願いとは全く逆に健常者の状態からどんどん離れていく行動なのです。
■ 進展段階を知らないのは、海図なしで航海に出るのと同じです。迷ってしまいます。
ほとんどの吃音の方が進展すればするほど辛くなることを知らずに、話すためのテクニックを使って、最も重くしかも最も本人を苦しめる第4層に向かって、本人は良い方向だと信じながら突き進んでしまうのはなぜでしょうか? それは進展段階のことを知らないからです。
例えば、太平洋を航海している時に海図もなくコンパスもなく現在の位置を測る方法も知らず、ただ進むだけの状態だと考えてください。これでは目的の方向に向かっているのか違った方向に進んでいるのか分からない状態になっています。航海と同じように、話すためのテクニックを使っている人や回避をしている人は、自分が吃音を持つ者として、今どこにいるのか(第何層なのか)位置を知る必要があります。そして進むべき方向を知る必要があります。
もし進展段階の内容が分かっていれば、第3層よりも軽い第2層のブロックを恐れて、第3層の二次的症状(解除反応、延期、助走、語の置き換え)を使わなかったでしょう。なぜなら二次的症状を使うことは2層よりも本人を苦しめる第3層に進めてしまうからです。
第4層の説明をします。
声が詰まると恥ずかしいと思い、話すことを回避し始めたときから第4層です。第4層は吃音の最終段階です。
社会的場面を含めて各人の日常生活で話さなければならない場面は数多くあります。一時的にいくつかの場面で、話すテクニックを使ってブロックしないで話せても、貴方を緊張させる要因は数多くありますので、また吃ってしまうのです。
自分で自身を罰し続けてきた方は、ますます辛さや苦しさが増えていきます。そして「他の人は自分を笑ったり、馬鹿にしているに違いない」と思うこともますます増えていきます。
頭に浮かぶのは自分の駄目な事が多くなり、道を歩いている時でも、食事をしている時でも、独りでいると知らぬうちに過去の失敗や、今日の失敗や恥ずかしかった事が頭に何回も浮かんでくるようになります。この上手く行かなかった事が浮かんでくると、辛い気持に何分間も囚われてしまう結果になります。振り払ってもふり払っても嫌な事がまた浮かんできます(日常活動時の嫌なことの反芻)。
とうとう、また「恥ずかしい思いをするのではないかという怖さ」が話そうという気持よりも強くなってきます。そして自分勝手に話す場合は、言いたいことがあっても言うのを止めることが出はじめます。これが回避(発話回避)です。
第4層でも最初の内は回避が少ないのですが、言えば吃ってまた嫌な思いをすることが分かっているので、徐々に言わないでその場をやり過ごそうとすることが多くなります。しかし、第4層の初めの内は、まだ授業などで順番に当たったり、本読みなどのどうしても言ったり読んだりすることを逃れられない時は、言葉や声を出すことを意識して、なんとしても出そうともがきながら頑張るのですが、もがけばもがくほど出なくなっていきます。
さらに、質問には聞こえなかった振りをしてその場をやり過ごしたり、自分は「うん」「そう」「違う」などの返答だけですむようになるべく相手に話させたりして、可能な限り「言わないですむ方法」を考えるようになります。こうしてますます回避が多くなっていきます。
「本当は私だってそんなこと知っていたよ」と言いたかったけど、言えば声が詰まってしまい恥ずかしく思うのが嫌で言わなかったこと、話すテクニックを使って何とか声のつまりを隠したことを、他の人には隠せても自分にだけは隠すことができません。このような時に、自分が言わないで回避している行動を自分で正当化するために、色々な理由付けをして自分で納得しようとします。
他方では、「回避」は自分は言えない駄目だとの思いが強烈になる結果を自分で招くのです。そして数年たって「吃音さえなければ・・・」と思い始めます。「発話回避」をすればするほど辛さや苦しさは増すばかりで、他の人には知られたくないという思いもさらに強くなっていきます。
さらに、徐々に私は駄目だという思いである「否定的自己認識」を持つようになっていきます。他の人には「自分が吃音者であることを知られたくない」との思いには「吃音のことを知られたくない」だけでなく「自分は駄目な人だ」と思われたくないという気持も入っています。
回避には2種類あります。1つ目は話すことを回避する「発話回避」でした。そして「話す場面では黙ってやり過ごしても、辛くて仕方がない」と感じ始めると、話さなければならない場面に入ることを避けるようになります。これが2つ目の「発話回避」より重い「場面回避」です。
例えば、ファストフード店には入って行きますが、買いたい物を言って注文するのを止めて商品の写真を指さすのは発話回避です。本心は買いたくても、注文の場面が辛くてファストフード店に入るのを止めるのが場面回避です。今日は○○の授業で当たって答えなければならないと分かると、その授業だけ欠席するのも場面回避です。この時に色々な理由を付けて自分を納得させたとしても、吃るのが恥ずかしくて、怖くてその場面に行かないのは場面回避です。
第4層では自然治癒がありません。訓練が必要です。
自然治癒とは何も訓練をしなくても治ってしまうことです。進展段階が進展していない第1層が最も自然に治癒しやすく、第2層でも自然治癒が期待できますが、第1層よりはやや少なくなります。第3層に入ると自然治癒することはごくわずかになり、第4層に進んでしまいがちになります。第4層では自然治癒はありません。
このように吃音の初期の段階ほど自然に治る可能性が高く、進展するに従って可能性が低くなります。可能性が高いうちに適切な指導を受ける方が良いのはこのためです。環境調整法にて対応し、治癒した場合でも厳密には自然治癒に含めます。
自然治癒がなくなった第4層は適切な訓練を受けることが唯一の軽減・改善の方法です。
下記の内容は全て二次的症状です。吃音児者独特の行動であり健常者は行っていません。工夫とはブロックした時に嫌な思いをしたくなくて、人為的に行う話すことの操作です。そのために使う個々のテクニックを話すためのテクニック(発話テクニック)と言います。
下記のもの以外にも沢山ありますが、ここで提示した目的はこれらのものは二次的症状であり、貴方がもし楽になりたいと強く願うなら止めるべき内容であることを知って欲しいからです。これらのテクニックを求めている方にとっては、しめた良いテクニックが手に入ったと思われる可能性があり、それでは逆効果ですので一部分だけとします。
1.注目行動
・話す直前にまたは話している最中に、最初の音は「タ行の音」だと語音(言葉の音)や
「みかん」という語だと言葉に注目する。
・今までの経験から発話前にこの言葉は言える・言えないと瞬時に判断する。
・喋る前からまたは喋っている最中に、喉に力が入ってきた、口に力が入ってきたな
どと体の緊張状態に注意を向ける。
・口や舌の動きに注意が向いたり、喋った後に今度は上手く言えたとか吃ったとか話し
た結果に注目したりして良かった悪かったと判断している。
・いつも話すことを意識している。
2.意図的発話
言葉は出さないと相手に伝わらないから言葉は意識して出すものだと考え、意識して一生懸命に言葉を出そうとする。
3.工夫
・喋る時に舌や口、呼吸器官の動きを意識的にコントロールする。
・意識的に口を大きく動かす。
・お腹に力を入れて声を出そうとする。
・息をゆっくり吐きながら話す。
・他人には分からないようにリズムを取って話す。
・速度を落としてゆっくり話す。
・一つ一つの音を伸ばして話す。
・「え~と」「あの~」などの言葉を言いたい語の前に意識して入れて話す。
・他人には分からないように体の一部を動かしながら話す。
・声が詰まると姿勢を意識して変えたり、色々な物に触ってみたりする。
・声に出して言う直前に頭の中で言えるかどうか一度確かめて、言えると思ったら言
い、駄目だと思ったら言うのを止めたりする。
・声に詰まったら笑われると思ったら言うのを止める。
・質問されても分からない振りをして(本当は分かっているが)言うのを止める。
進展段階第3層、4層の吃音児者の発話行動は、「考えた内容を相手に伝えるには①伝
えようと考えなければいけない、②それを何としても伝えよう、そのためには話さなけれ
ばいけない、③話すためには言葉を出さなければならない、④言葉を出すためには声をだ
して口を動かして発音しなければ相手には伝わらない。⑤だからうまく口を動かそう」と
考えます。そして同時にこの○○の音は上手く声が出るか?出なかったらどうしよう。苦
手な音だ。また声が詰まったら変な人だと思われるに違いない。そうなったら恥ずかし
い。何としても声を出そうなどと考えながら自分の意思で話そうとします。そして吃るの
です。
これに対して、健常者は内容を考えるだけです。後は全部頭に任せています。今話すべ
き時かそうでないのかなどは、話す機能とは別の判断力に任せてあります。話すプロセス
は頭の中で無意識に行われる自動化されたものであり、本来自分の意思でコントロールす
るものではないのです。自分の意思で行うのは考えることだけです。そして問題なく話せ
ているのです。
健常者の発話行動を図で示してあります。点線でかこってある部分は普段の日常生活場面では全く意識しません。そして話した結果にたいし、うまく話せたかまずかったのかも分析しません。もし点線の部分も行うというのであれば、初めて習った外国語を言ってみる場面くらいです。母国語ではしていません。
第3層、4層の吃音児者の発話時の行動を少し細かく示したものです。健常者であれば「手段」である部分が目的に変わってしまっています。そして話した結果も常に分析し、良かったダメだったと一喜一憂するのです。自分の母国語をまるで習いたての外国語のように一生懸命頑張って話しているのです。言葉を変えますと本来自動化され無意識の内に働くプロセスを自分の意思でコントロールしようと頑張っているのです。
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